氷河期世代がブラック企業でアーリーリタイアに挑む

氷河期世代の42歳。血を吐く思いで貯金してアーリーリタイアするのが目標です。蓄財方針は専守防衛。

ブラック企業列伝:異動した部署はスーパー残業ブラックだった その3 -北田君の反逆―

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これまでのお話↓↓

 

目次

北田君

前回記事で紹介した北田君(当時26)。

彼は俺より1つ年下で、入社時期もほぼ同じ。お互いにため口をきく同期みたいな間柄でした(厳密には同期ではない)。 

北田君はかなり明るい「陽キャ」だったんですが、気性も激しいタイプでした。でも本当に純粋ないい人だったので俺は嫌いじゃありませんでした。なんというか熱血サラリーマンみたいなイメージです。

北田君と俺は休日に飲みに行くこともあり、俺のアーリーリタイア計画を密かに話したこともありました。

 

 

北田君の涙

俺と北田君が異動してきてから数か月。滅茶苦茶な残業と睡眠不足などで二人とも弱っていました。

そしてある日。北田君はとうとう限界が来たのか19時に強引に退社しようとしたことがありました(※標準退社時刻は0時)。そのことで上司にボロカスに怒られ、北田君は部屋を飛び出し喫煙所に引きこもってしまいました。俺はすごく心配になったので喫煙所に行ってみたら・・・北田君は泣いていました

俺は「とにかく明日からも頑張ろう。明日からちゃんとすればきっと許してもらえる。俺もつらいけどとにかく一緒に週末まで頑張ろう。」みたいなことを言って慰めた気がします。

  

北田君の精神が崩壊し始めた

その頃から北田君はどんどんおかしくなっていきました。もともとはハキハキしゃべる明るい奴だったんですけど、なんかしゃべり方がどもったりつまったりするようになり、表情も声のトーンも暗かったです。挙句の果てには誰にでもわかるウソをついて有給を取ろうとしてバレたり、つじつまの合わない言動や行動も目立つようになりました。 

 

社内いじめ

上司たちは北田君を煙たがるようになり、とうとう「北田いじめ」が始まりました。ほとんどの社員が北田君に常に厳しい態度で接するようになり、北田君の話し相手は俺だけになってしまいました。俺も一緒にいじめられるんじゃないかと怖かったんですけど、北田君が完全孤独になってはいけないので喫煙所や外で雑談し、ガス抜きの相手をしていました。いつも「いじめられて辛い。俺は職場が正常になってほしい」「辞めて逃げても他にいくところもない」「残業もつらい」と半泣きで訴えてきました。でも俺は気の利いたアドバイスができず困ってしまって、結局うなずくことしかできませんでした。

 

 

北田君の反逆

そしてある日のいつもの残業中。

21時ごろに北田君が突然課長の席に行き・・・ブチきれました。

 

「意味もなく毎日1時まで無給残業を強要するのはおかしい!!」

「飲み会の後の残業には何の意味もない!!」

「全員が普通の思考に戻れば全員が20時くらいには帰れるはず!!損をする人などいない!!」

「社内いじめはやめてほしい!!」

「この状況がずっと続いているのは課長のせい!!!」

「著しく合理性に欠ける!!!」

「合理的に仕事を管理する責任はアンタと所長!!!」

「俺は他に行くところがない、この職場がまともになってほしい!!!」

「みんなもこんなことはもうやめよう!!」

 

みたいなことを怒涛のように課長に大声で叫んでいました。部屋中に響いてわざと職場全員に聞こえるように、というかみんなに話しかけている感じでした。少なくとも俺には北田君が言っていることは完全に正論に聞こえたし、心の中で拍手です。

この時の北田君は何かが吹っ切れていたのか?突然どもりが治って昔の北田君に戻っており、気迫でも完全に課長を押していました。

 

職場全体が沈黙していました。ニヤニヤして北田君を見ている人もいれば、無表情で何事もなかったかのように仕事を続けている人もいました。

そして長い沈黙に耐えられなくなった北田君。

 

「〇〇さん、××さん、どう思いますか!? …ヤイタくんは!!??」

 

と名指しで意見を求め始めました。

でも俺には勇気がなく、その空気では無言を貫くことしかできませんでした・・・。〇〇さんと××さんも同じで何も言えませんでした。ずっと沈黙が続きます。

 

 

課長の反応

ついに課長が席から立って口を開きました。

 

「北田さんのいうことにも一理ある。みんな不要不急の残業はしないように。今日はもう早めに帰りましょう。」

 

俺は北田君、よくやった!!!課長がわかってくれた!!)と心の中で拍手をし、安堵感を覚えました。

 

課長「はいみなさん、そういうわけで。帰るぞ~ ホラホラ 早く早く~」

 

そしてそう言った後・・・

なんと課長は再び椅子に座り、何事もなかったかのように仕事を再開しました。皆も課長に同調し仕事に戻っていきました。

 北田君は職場を飛び出しその日は返ってきませんでした。

そして翌日からも会社は何一つ変わることはありませんでした。

 

北田君の捨て身の反乱は失敗に終わりました。

 

 北田君の最後

その後北田君は完全に心を閉ざしてしまい、誰とも話さなくなりました。

職場ではこれまでの北田君に対する罵詈雑言はなくなったものの、その代わり全ての仕事から降ろされ、完全にいない者として扱われるようになりました。

北田君は1か月ほどはひたすら毎日16時間、無表情に座って過ごし・・・結局そのまま会社を辞めました。送別会はありませんでした。

これは5年くらい後に聞いた話なのですが、北田君にはもともと両親がおらず実家もなく、退社後はお姉さんの家に引きこもりながら病院に通ってたそうです。心を痛めてしまい、会社を辞めても明るかった北田君は戻ってきませんでした。

ただまともなことを言っただけなのに彼の人生はめちゃくちゃになりました。

 

謝りたい

俺は後悔しています。北田君が勇気を出して課長に反逆したあの時「俺もそう思います」と同調すればよかった。そうやって空気を変えれば北田君は少なくとも救われたし、職場のブラックっぷりも改善されたかもしれません。でも俺には勇気がありませんでした。心の中では完全に同調していたにも関わらず、みんなの前で北田君の味方をするのが怖かった。

うちの場合は上下関係が極めて厳しく、一度でもこういうことをすると上記のような悲惨なことになってしまいます。そんな一番難しいことをやってのけた北田君。北田君が開いた道を進むことは遥かに簡単なことなのに、俺は怖くて傍観者になってしまった。多分北田君は自分に同調してくれそうな人を選んで、すがるような思いであの時俺に意見を求めたんだと思います。

すごく酷いことをしてしまったと思っています。

15年くらい前の話ですが今でも北田君のことが頭から離れません。

 

ブラック企業はいとも簡単に社員の人生を壊してしまいます。

そしてその体制や雰囲気を正常に変えることは極めて難しいです。

だから世の中のブラック企業はすべて会社を畳んで消滅すべきです。

 

俺は消極的手段であったにせよ、北田君の人生を崩壊させることに加担してしまった。そんな俺が言えた義理ではないですが、今40歳になった北田君がどこかのまともな会社で幸せに暮らしていることを願っています。

あの時は本当にすみませんでした。

 

 

以上、2つ目のブラック事務所のお話でした。


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